10月6日夜の、シリア北東部から米軍を撤退させるとのホワイトハウスの発表と、それに続く9日のトルコのシリア北東部への侵攻は、米政界と欧米を拠点とする国際メディアに大騒動を巻き起こした。

その多くはトランプの「衝動的で、軽率な」撤退の判断を非難する、しばしば嘲笑するものだった。

確かにトランプのTwitter等での発言は衝動的・軽率な印象を与えることが多い。

しかしシリア北東部から米軍を撤退させるという判断自体は、穏当で、不可避なものである。昨年12月から撤退の意図は宣言されており、「衝動的」な判断とは言い難い。トルコはシリア内戦の発生当初から、クルド勢力の台頭を危惧し、「安全地帯」の設置を提唱して米国と交渉し、弛まず段階的に実施してきた。今回の決断は、米国が長期間抱えてきた解けない難問に、トランプが始末をつけようとしたものであり、そのことをもって批難されるべきではない。

それについては『フォーサイト』でも複数回まとめてある。

池内恵「「イスラーム国」問題へのトルコの立場:「安全地帯」設定なくして介入なし」『フォーサイト』《中東―危機の震源を読む (87)》2014年10月17日

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