「中国経済」成長鈍化で「鄧小平テーゼ」の終焉

執筆者:後藤康浩2019年10月23日
開通式には習近平主席も出席して華々しく世界にお披露目した「港珠澳大橋」だが、投下資金は永遠に回収の見込みはない(C)photoAC丸岡ジョー
 

 中国の7~9月期の国内総生産(GDP)伸び率(前年同期比)は、4~6月期に比べ0.2ポイント低い6.0%に低下、遂に6%割れの瀬戸際に追い込まれた。

 中国政府が手をこまねいているわけではない。インフラ投資の拡大、企業減税、金融緩和、消費てこ入れなど政策を総動員しているが、下落を止めることができない。

 理由は単純だ。付加価値と雇用の源泉だった優良な工場が先を争うように海外に移転しつつあり、中国は1990年代後半以降の「世界の工場」から「脱・世界の工場」へと逆方向にスイングしているからだ。

 同時に、これから習近平政権が直面するのは、中国の発展の青写真を描いた鄧小平が示した「成長がすべてを解決する」というテーゼの終焉である。成長の鈍化は、自らを「執政党」と呼ぶ中国共産党の致命的な失政になりかねない。

気づいたら「産業空洞化」

 中国の成長率は、直近では2010年をピークにして下落軌道を描いてきたが、途中までは、経済規模の拡大と成熟化という説明で納得できる範囲の成長鈍化だった。庶民の感じる景況感も2017年まではさほど悪化はしておらず、自動車や住宅もそれなりに売れ続け、海外旅行ブームが盛り上がっていた。

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