ハノイ「決裂」からの再起

執筆者:平井久志2019年10月28日
建造された新型潜水艦を視察する金正恩党委員長。『朝鮮中央通信』が7月23日に配信した[KCNA VIA KNS](C)AFP=時事

 

 今年2月のハノイでの米朝首脳会談が、何の成果もなく決裂したことは、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長にとっては、最高指導者の権威すら傷つけかねない大きな躓きであった。北朝鮮メディアは、金党委員長が平壌を出発する時は「第2回朝米首脳会談のために平壌出発」と大々的に報じたが、帰国については「ベトナム公式訪問を成功裏に終えて祖国へ到着」と報じるなど、米朝首脳会談の失敗を覆い隠さなければならなかった。おそらく、金党委員長にとっては人生最大の挫折であっただろう。

挫折からの再起

 金党委員長は、3月10日に行われた最高人民会議の代議員に立候補しなかった。これは4月に行われる選挙後の最高人民会議で、新たな職責に就くための布石ではないかという見方が出た。

 しかし、ハノイ会談が決裂し、何の成果も得ずに帰国した直後に、新たな職責に就いて大々的な祝賀行事をやれるような状況ではなかった。4月11日に開催された、最高人民会議第14期第1回会議では憲法が改正されたが、新しい職責は設けられず、金党委員長は、改正で職責を強化した国務委員長に再選された。

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