「新しい方式」の中身

執筆者:平井久志2019年10月30日
米朝実務交渉のトップであり、その発言でも注目されるビーガン北朝鮮担当特別代表 (C)EPA=時事

 

 9月に入ると、米朝実務協議への動きは少し好転し始めた。

 米国の実務協議を統括するスティーブン・ビーガン北朝鮮担当特別代表は、9月6日にミシガン大学で注目すべき講演をした。ビーガン特別代表は2月に訪朝して北朝鮮と実務協議をする直前の1月末にスタンフォード大学で講演をし、実務協議に臨む米国の立場を語ったことがある。ミシガン大学の講演内容も北朝鮮への一種のメッセージと言えた。

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 ビーガン特別代表は講演で、特別代表に就いた後にヘンリー・キッシンジャー元国務長官と会う機会があったとし、キッシンジャー氏から「今、北朝鮮の核兵器を取り除くことに集中しているが、もしこの努力が失敗すれば、未来においてアジア全域で核拡散に対応せざるを得なくなる」という助言を受けたことを紹介した。その上で、北朝鮮の非核化交渉に失敗すれば、日本や韓国が核を保有する可能性があると警告した。

 ビーガン特別代表は、北朝鮮が実務協議に応じると言えばすぐに対応できる準備ができている、として実務協議を早期に行うことを訴えた。さらに「シンガポール共同宣言にもとづき、両国関係を敵対と不信から、両国の首脳のビジョンを具現する最終的な合意の状態に引き上げる一連の措置を樹立する準備ができている」として、シンガポール合意のすべての条項を履行する用意があることを明らかにした。ビーガン特別代表の「一連の措置」の中身にも関心が集まった。

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