「わが人民の憤怒」の真意

執筆者:平井久志2019年10月31日
金剛山観光地区を現地指導した金正恩党委員長(『労働新聞』HPより)

 

 それでは、米国務省が実務協議後に明らかにした、ストックホルムに持って行った「創造的なアイデア」や「新たな計画」とはどういうものだったのだろうか。

「創造的なアイデア」とは何だったのか

 今年2月末のハノイの首脳会談では、北朝鮮側は寧辺の核施設の廃棄と国連制裁5本の解除を提案した。国連で2016~17年に採択された北朝鮮への制裁決議は12本あり、北朝鮮はそのうちの2017年の5本だけの解除を要求する部分解除としたが、実質的には北朝鮮の貿易面での制裁を全面的に解除することを要求するものであった。

 米国は北朝鮮側のこの提案に対し、寧辺の核施設だけでなく、濃縮ウランを生産している秘密施設の廃棄も要求し、具体的な地名も挙げたという。

 このため、実務協議でも「寧辺プラスα」と「対応措置」の内容が、北朝鮮の非核化交渉の中心課題になるとみられた。

 韓国の『聯合ニュース』は7月11日、ホワイトハウス内の北朝鮮問題に精通した消息筋の話として、米国が寧辺の核施設を全面廃棄し、核プログラムを完全に凍結することに同意すれば、12カ月から18カ月の間、北朝鮮が石炭と繊維製品の輸出をすることを認める案を検討している、と報じた。この方式が有効ならその他の施設にも拡大し、米国側の対応措置として、終戦宣言や連絡事務所の設置も対象として検討されているとも伝えた。

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