展示風景 序章「時の間」 新素材研究所
(C) N.M.R.L./ Hiroshi Sugimoto + Tomoyuki Sakakida Photo : Yuji Ono

 

 私たちをエントランスで出迎えるのは、杉本博司氏の《逆行時計》(2018年、個人蔵)。作家の手で修復された1908年製造のタワークロックは、なぜか時を遡り、針は逆方向に進んでいる。対する私たちはすでにここから、この展覧会の中心的テーマである「時間」に囚われていくのだ。

「どのような進化を遂げたのか」

 国立新美術館で開催されている「カルティエ、時の結晶」は、世界で初めて1970年代以降の「カルティエ」の現代作品に焦点をあて「時間」をテーマに、序章「時の間」に続く、「色と素材のトランスフォーメーション」「フォルムとデザイン」「ユニヴァーサルな好奇心」という3章で、普遍的でありながらも革新的なカルティエのデザインを紹介している。

《ネックレス》 カルティエ、2018年
ゴールド、ダイヤモンド、エメラルド、スピネル、ガーネット、ターコイズ、オニキス
個人蔵 Vincent Wulveryck (C)Cartier

 カルティエのイメージ スタイル&ヘリテージ ディレクターのピエール・レネロ氏は、カルティエにおける3つの責任を「スタイル」「クリエイティブプロセス」、そして「ヘリテージ」だと言う。1970年代、カルティエは自身の作品への考察を深めるために自らの作品を収集し始め、1983年、「ヘリテージ」といえる「カルティエ コレクション」を正式に創設した。ジュエリーや時計などの作品群は、1989年にパリのプティ・パレ美術館で大規模な展覧会が開かれて以降、これまでニューヨークのメトロポリタン美術館、ロンドンの大英博物館、モスクワのクレムリン美術館、北京の故宮博物館、そして東京国立博物館など、世界の錚々たる美術館・博物館などで展覧会が行なわれてきた。

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