「即位礼正殿の儀」で即位を宣言される天皇陛下と皇后さま(C)時事
 

 大嘗祭(だいじょうさい)が、いよいよ11月14日、15日に執り行われる。即位後最初の新嘗祭(しんじょうさい、にいなめさい)を、大嘗祭と呼ぶ。天皇にとってもっとも大切な1代1度の祭事だ。また、毎年行われる新嘗祭は、新穀を天神地祇にお供えし、そのあと天皇みずから食す神事(共食)で、「共食」そのものが、重要な呪術の1つなのだ。たとえば初代神武天皇がヤマト入りするとき、天香久山の埴土(はにつち)を用いて造った土器に神饌(食べ物)を盛り、神に供え、共に食したことで、決して負けぬ体になったという。要するに大嘗祭とは、天皇が即位後、はじめて神と食事をともにする神事といえよう。

 ただし、大嘗祭には、いくつもの謎が隠されている。たとえば、大嘗殿の内陣には、敷き布団や枕、掛け布団(衾=ふすま)などの小道具が備わっているが、それらを使って具体的にどのような神事が執り行われているのか、秘密にされている。しかも「誰を祀っているのか」さえ、本当のところは分かっていないのである。

 平安時代に記された文書には「天神地祇(要は八百万の神々)」や「至尊(しそん)=もっとも貴い神」を祀るとあるが、神の名を挙げていない。

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