頓挫した世界最大の自由貿易圏構想(C)EPA=時事

 

 バンコクで開かれた東アジア地域包括的経済連携(RCEP)首脳会議に出席していたナレンドラ・モディ首相は11月4日、同貿易協定が「2012年11月に合意した基本的理念を十分に反映しておらず、インドにとっての重大な懸念も解消されていない」として、交渉からの離脱を表明した。

 RCEPによって、中国などからの安価な農産物や工業製品が大量に流入することを警戒してのことだったが、政策上重要な経済パートナーである東南アジア諸国連合(ASEAN)との関係強化を図る巨大貿易協定から土壇場で脱退したことは、グローバルな存在感を強めたかったインドにとってアジアでの孤立を招きかねない。国家の威信にも少なからず傷がついた格好だ。

 しかし、経済成長が減速し「農村の困窮」が深刻化。農民団体や野党だけでなく、身内からもRCEP反対の声が高まる中では、まさに苦渋の決断だったといえるだろう。

世界最大の貿易協定

 RCEPにはASEAN加盟10カ国(ASEAN10)と、日印中韓、そして豪州、ニュージーランドが加盟。「東アジアサミット」参加国から米露を除いた16カ国で構成する。2012年11月にカンボジアで開いたASEAN首脳会議で正式な発足が決まり、各国による交渉が続いてきた。

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