8月26日に公開された写真の1枚(C)AFP=時事

 

「何でもありのタイ」と充分に承知していた心算だったが、10月21日夜、タイ政府官報が伝えたマハー・ワチュラロンコン10世王の勅令には、やはり驚かざるを得なかった。

 勅令は「王室の伝統制度に背き、国王に対し不忠であり、王権を僭越し、爵位に不満を抱き、王妃に比肩しうる振る舞いを企図した」ことを理由に、シニナート・ウォンワチラーパック妃に与えられていた「チャオクンプラ」というタイ王室独自の称号のみならず、王室における職権、国軍における階級及び王室が過去に授与した一切の位階・勲章を剥奪したことを明らかにした。

 23日には「私利を謀り、法令に違反し、国家に損害を与えた」ことを理由に王室職員と王室警護隊員の計6人が罷免され、さらに10月29日には「公職者にあるまじき行為、厳重なる違法行為、公務遂行上の個人的問題」などを理由に、2人の王室警護官を含む4人の王室職員が罷免され、国軍の階級を剥奪されている。

 10月最後の10日程の間に起こった出来事に、いったい関連はあるのか。  

皇太子時代から枢要な立場に

 シニナート妃が「チャオクンプラ」の称号を授けられたのは、国王の67回目の誕生日に当たる今年7月28日であった。そして1カ月後の8月26日になって、タイ王室は公式サイトで、彼女の略歴に加え、国王と彼女を写した数枚の写真――称号を授かった後に国王の横に侍立する礼装の彼女、軍服の国王に侍す同じく軍服の彼女、航空機のコックピットに収まった彼女など――を公表した。

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