3週間にわたって反政府デモが続いている(C)AFP=時事

 

 チリの首都サンティアゴの地下鉄運賃の値上げに対する学生たちの抗議に端を発した反政府抗議活動は、10月18日以降、チリ全土に及び、収拾の目途は立っていない。中南米で最も安定した民主制度の下、成長を遂げてきた国の予想外の社会騒乱である。

 セバスティアン・ピニェラ大統領が11月中旬に迫った「アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議」と12月初旬の「国連気候変動枠組み条約締結国会議(COP25)」開催を断念すると発表すると、さらに驚きと衝撃が世界に走った。

 チリは30年前の民政移管後、軍政から継承した自由開放経済の下で持続成長を遂げ、「中南米の優等生」の地位を誇ってきた。人口2000万に満たない南米の小国が自由貿易協定をテコにグローバル市場との統合により、1人当たりの国民所得を2万ドルまで押し上げ、高所得国の仲間入りを果たそうとした矢先の混乱である。

 15年振り2回目となるAPEC首脳会議の当地での開催は、かつて「先進国クラブ」と呼ばれた「経済協力開発機構(OECD)」に2010年に加盟を果たしたチリとしては、民主主義と自由市場の成功を世界にアピールする絶好の機会となったはずだ。

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