東ドイツの国境を越えて、西ベルリンに入る人々(1989年11月、筆者撮影・以下同)

 

 旧東ドイツ人の東西格差に対する不満は投票行動に表れている。

 旧東ドイツでは右翼政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の人気が旧西ドイツよりも高い。2017年の連邦議会選挙、今年の欧州議会選挙ともに、AfDは旧東ドイツ全体で20%を超える得票率を記録した。これは旧西ドイツでの同党の得票率の2倍を超える。

 今年9~10月にはザクセン州など旧東ドイツの3つの州で州議会選挙が行われ、AfDはいずれの州でも得票率を前回の選挙に比べて2~3倍に増やし、第2党となった。

心の隙間に入り込んだAfD

 AfDには、イスラム教徒や黒人をあからさまに差別したり、ナチスの犯罪を矮小化したりする発言を公然と行う幹部が多い。それにもかかわらず旧東ドイツの有権者の5人に1人がAfDを選ぶのは、統一後に自分の人生を否定されたと考える市民が、政府に抗議の意思を示すためである。AfDの右派ポピュリストたちは、物質的な生活水準の改善だけでは埋められない旧東ドイツ人の心の隙間を、巧みに利用して得票率を増やしたのだ。

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