「GIJC」で講演した筆者(左)とワセダクロニクル記者の斎藤林昌氏(「UPLAN」三輪祐児氏提供)
 

 もし「毎日のむ薬に、発がん性物質が含まれていた!」と聞いたらどうするだろう。

「微量なので健康にただちに影響することはない」と言われたところで納得できるだろうか。

 厚生労働大臣の承認を得て製造販売されている薬に、発がん性物質が見つかり回収されるという騒ぎが相次いで起こっている。高血圧治療薬「バルサルタン」の原材料に「N-ニトロソジメチルアミン」(NDMA)などの発がん性物質が含まれていることが判明し、2018年7月から2019年2月にかけて数社から自主回収が発表された。また、2019年9月にも胃薬の一種「ラニチジン」にNDMAが検出され、11社を巻き込む回収騒ぎになっている。

 この発がん性物質の混入事件は、いずれも欧米でまず露見し、その後日本にも波及した。安価な後発薬、いわゆるジェネリック医薬品が主に絡む問題だ。その背景には、ボーダーレス化した医薬品の製造・流通過程と、医療費抑制政策がある。

日常的に処方されるジェネリック

 年々高騰する医療費にどう歯止めをかけるのか。医療費が増え続ける理由の1つは、新薬(先発薬)の価格にある。新薬開発には多額の費用がかかることから高額に設定されることが多く、時には人気漫画の主人公「ブラック・ジャック」ばりに、あまりに法外だと問題視されるほどだ。最近では、数千万円から1億円を超える価格の新薬まで登場している。医は仁術とばかり言っていられない時代なのだ。

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