東日本大震災の被災地を思わせた、がれきの光景=11月10日、丸森町中島地区(筆者撮影、以下同)
 

「山津波」――。台風19号が各地に豪雨水害をもたらした10月12日の夜、宮城県丸森町は町域全体が浸水や土石流の被災地となり、ある住民はその有様を、「山から津波が来たよう。山津波だった」と筆者に語った。

 丸森町は直前まで、宮城県一の繭生産を誇っていた。歴史ある養蚕業の文化の伝承者たちは水害でどんな経験をし、どう乗り越えようとしているのか。以前取材をし、いまは被災地となった小さな町を訪ねた。東日本大震災の津波被災地の風景さえ重なる被災地の現状とともにお伝えしたい。

「猫神」に守られた町

〈「猫神」をご存じだろうか。丸まったり、背を伸ばしたり、寝入ったり。猫の姿がリアルに彫られた石碑や石像が80余基も宮城県丸森町に残る。多くは江戸から明治の時代にまつられ、養蚕農家の守り神とされた。生糸を取る繭を食い荒らしたのがネズミ。それを退治する猫はありがたい味方だった。〉(2018年4月19日『河北新報』コラム「河北春秋」より)

 筆者が記者時代に書いたコラムの一節である。

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