1989年12月3日、米ソ首脳のマルタ会談の後、共同記者会見に臨むブッシュ米大統領とゴルバチョフ・ソ連共産党書記長(右)。第2次世界大戦後の「冷戦」の終結と同時に、世界新しい時代が到来したことを宣言した (C)AFP=時事

 

 1989年は現代史の転換点とされる。8月、ハンガリー西部ショプロンで東側と西側を隔てていた鉄条網がわずかに開いたのを皮切りに、11月には東西ドイツの分断を象徴するベルリンの壁が崩壊、12月2~3日に地中海のマルタで開かれた米ソ首脳会談で東西冷戦の終結が宣言された。

 それから30年。当時、西側諸国が自画自賛した民主主義も経済自由主義も今はすっかり色あせ、米欧など旧西側ではポピュリズムが、中国やロシアなどでは権威主義が、大手を振るう。私たちは冷戦終結の30年後、なぜここへ至ったのか。今年10月フランスを訪れ、2人の知識人に尋ねた。

自信過剰に陥った西側

 ユベール・ベドリヌ氏は1989年当時、フランスのフランソワ・ミッテラン大統領の官房で報道官を務めていた。91年に大統領府事務局長に昇格、ソ連崩壊後の欧州を権力の中枢で見つめ続けた。95年に退任後、シラク政権の97年から2002年までは外相を務めている。現在は、パリで自らのコンサルティング会社を運営する。

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