総選挙に向けてジョンソン(右)率いる保守党が優位であるものの、連立を考えれば、コービンが党首を務める労働党に幸運が舞い込むかもしれず、まだまだ予断は許さない (C)AFP=時事

 

 ブレグジットが実現する前から、英国ではその影響がじわじわ広がり始めている。『タイムズ』は、農園で大量のリンゴが木から落ちて地面に転がっている写真を、電子版に掲載した。ブレグジットを前にした英通貨ポンド安と査証の不安から、英国で働いていた多くの外国人労働者らは、欧州大陸に移動を始めていた。このため、英国で果物の収穫に携わる人がいない。リンゴは落ちたまま、腐るのを待つしかないのだった。

 ブレグジットは、一種の移民排斥運動でもある。自ら招いたこととはいえ、英国は内側から少しずつむしばまれていた。

ジョンソンの署名もない書簡

 離脱協定案の法案採決が延期された10月19日の夜、英首相ボリス・ジョンソンは「ベン法」に基づき、EUに対して離脱期限の延期を求める書簡を送った。その一部は、議会が定めた延期要請の書式をそのままコピーしたもので、ジョンソンの署名もなかった。「10月末離脱」を公約に掲げていた彼にとって、延期要請は屈辱以外の何物でもない。その悔しさとやる気のなさがありありだった。ただ、ジョンソンはこの時点で、10月末離脱の可能性をまだ捨てていない。延期要請はベン法が命じるからしただけで、10月中に議会の承認が得られれば、延期するまでもなく晴れて離脱できる。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。