かつては「ハバートの曲線」に代表されるように、再生不可能な石油の埋蔵量には限界があり、石油供給はいつか「ピーク」を迎えるものだ、との認識が大勢を占めていた。それが「ピークオイル論」だった。

 だが、筆者が『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?』(文春新書、2014年9月)で解説したように、「埋蔵量」とはその時々の経済条件と技術水準によって算定されるものだ。有限ではあるが、我々凡人の時間軸ではほぼ無限に近いものだ。

 すなわち「ピークオイル論」は最初のところから誤解に基づいていたのだ。

 そして1990年代末に始まった米国の「シェール革命」が石油供給の無限性を示唆し、環境問題の深刻さも相まって「ピークオイル論」は供給の問題ではなく、需要の問題だと認識されるようになった。「供給」がピークを迎えるのではなく、「需要」が先にピークを迎えるだろう、というのだ。

 まさに、かつてサウジアラビア(以下、サウジ)の石油相だったザキ・ヤマニが慧眼をもって喝破したように、「石器時代が、石がなくなる前に終わったように、石油の時代も、石油が枯渇して終わるのではない」ということだ。

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