強まるトルコ=カタールの紐帯

執筆者:池内恵2019年12月21日

今回の現地調査では、カタール・ドーハでの用事を終えた後、トルコのイスタンブールとアンカラを巡った。カタールで目立つのはトルコの影響力の増大である。ドーハ・フォーラムでも、総合司会がトルコの国営放送TRTワールドのキャスターであるのに始まり、エルドアン大統領の補佐官として著名なイブラヒム・カルン氏、メブルト・チャブシオール外相、そしてフルシ・アカル国防相(元参謀総長)が順次登壇した。

アカル国防相はドーハ・フォーラムでの登壇に加え、ドーハに置いたトルコ軍部隊の基地を訪問し、カタールのハーリド・ビン・ムハンマド・アル=アティーヤ国防相と共に、トルコ・カタールの統合司令部の除幕式を行なった。この基地には先月、エルドアン大統領も訪問している。

2017年6月のサウジ・UAEとの断交・封鎖開始の際に、あわや両国の軍部隊をカタールが侵攻するかとも噂された際に、トルコが急遽部隊を派遣したことは、カタールの独立・主権の維持のために決定的な効果があった。カタールはこの時の「借り」を返し続けることになるのだろう。

人口大国・軍事大国のトルコと、小国だが財政的に裕福なカタールは、相互補完の関係にある。カタールの安全保障上の危機をトルコが軍部隊の派遣で救い、トルコの経済危機をカタールの投資が緩和する。

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