(4)北の「強硬姿勢」で手ぶらの「ビーガン」

執筆者:平井久志2019年12月29日
ビーガン特別代表は韓国、日本、中国を歴訪中、北朝鮮の応答を待ったのだが……(C)時事

 

 北朝鮮は今年5月4日から11月28日まで13回にわたり、計25発のミサイルや放射砲を発射してきた。これらは朝鮮労働党機関紙『労働新聞』の1面などで大々的に報道されてきたのだが、今回の「非常に重要な実験」は『朝鮮中央通信』では報じられたものの、国内向けメディアでは報じられなかった。その実験内容についても説明を控えた。

戦略的曖昧性

 またこれまでは、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が現場で指導したが、今回は現地には出向かず、報告を受けるというスタイルだった。

 一方で、この実験は「遠からず、戦略的地位をもう一度変える上で重要な作用をすることになるであろう」とし、近く行われるであろう実験のための準備作業であることを示唆している。こうした意図的に曖昧な発表をしているのは、対米圧力の一環として行われた実験という印象を与える。

 北朝鮮は12月下旬に党中央委員会総会を予定しており、そこで新たな路線を決定する可能性がある。その前に手の内を明らかにすることは避け、米国に「新しい計算法」を早く持って来いと圧力を掛けている形だ。対米圧力のための「戦略的曖昧性」とでもいうような攻勢に出ているといえる。

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