「プラユットは出ていけ」と書かれたTシャツを着る新未来党の支持者。12月14日の集会にて(C)EPA=時事

 

 2014年のクーデターから5年ほど続いた国軍主体の暫定政権時代が幕を閉じ、2019年3月末の総選挙を経て民政移管が実現したタイ。閣外協力も含む大小19政党による連立の文民政権として装いも新たに発足したプラユット・チャンオチャ政権だったが、年末を前にして2つの難題が浮上してきた。

 1つは、タナトーン・チュンルンルアンキット党首が率いる「新未来党」の解党問題に端を発する反政府運動。もう1つは、国民の9割が仏教徒のタイで分離独立を目指して活動を続けてきた、イスラム武装集団によるテロ事件である。

 前者は首都バンコク中心部での、後者はマレーシアと国境を接する「ディープ・サウス(深南部)」と呼ばれる最南部一帯での動きであり、主義主張や行動様式も異なる。

 だが、両者が内包する複雑な政治的・歴史的・社会的背景から判断するなら、事態の推移によっては歴代憲法が国是として謳う「国王を元首とする民主主義制度」を直撃する可能性も考えられる。

 加えて、前者は憲法改正問題に絡み、後者はマレーシアとの間の外交関係に微妙な影響を与えるだけではなく、中東イスラム過激派テロ組織の浸透という国際的難題とも連動しかねない。それだけに、政権の後ろ盾とされる国軍を背景にした従来型の強引な手法を持ち出すことは得策ではないだろう。いや、混乱を拡大させかねないのである。

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