ビットコイン普及でねじ曲げられた「理想」

執筆者:野口悠紀雄2020年1月9日
リブラ公式HPより

 

 2010年、それまで一部の専門家だけの間にあったビットコインが、広く社会の注目を集めることになった。取引所などの「第三者」が登場し、ビットコインの性格が、当初の目論見からは大きく変わっていった。

買わないとビットコインを入手できなくなった

「スラッシュドット」に記事が掲載されて、ビットコインを巡る状況が急激に変化した。

 それまでは、プログラマーなどを中心とする少数の専門家たちが、ビットコインを普及させようと、さまざまなボランティアの努力をしていた。

 それが、急に社会に飛び出して注目を浴びることになったのだ。

 これ以降、ビットコインの性格は大きく変わっていくことになる。

 それまでは、理想の社会を実現したいと願う人々の善意と献身的努力によって支えられる世界にいたものが、悪意と欲得が渦まく現実の世界に投げ込まれたということだ。

 第1の変化は、ビットコインの採掘作業の困難化だ。

「スラッシュドット」の記事が掲載される前の2010年6月に3000件程度だったダウンロード数は、7月には1万件を超えた。

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