ホテルニューオータニで会見に臨むフジモリ元大統領(C)時事

 

 日産自動車の元会長カルロス・ゴーン被告が日本の裁判を逃れ、国籍のあるレバノンにまんまと逃亡した時から、筆者にはもう1人の重要人物の逃亡劇が重なり合い、頭から離れないでいる。

 置かれた状況は全く正反対で、現在はペルーで25年の刑に服しているアルベルト・フジモリ元大統領の逃亡である。

 ゴーン被告は、ブラジルの有力紙『エスタド・ジ・サンパウロ』とのインタビューで、

「逃亡を成功させるには、素早く出し抜く必要がある」

 と語ったと伝えられている(『共同通信』1月13日付電子版)。

 ブラジル生まれ、レバノン育ちのゴーン被告は、国際的ビジネスマンとしてブラジルとフランスで成功を収めたいわゆる「ノマド」(遊牧民)だが、「生き馬の目を抜く」ラテン世界を生き抜いてきた人物である。

人間が生き抜いていくための知恵

 ラテンアメリカなどラテン世界には、八方塞がりの状況下で相手を出し抜いたり、法の網の目をかいくぐったりして敏捷に立ち回り、即興的独創的な解決策を見つけて危機を乗り越えていく「知恵」が埋め込まれている。ポルトガル語で「ジェイティーニョ」、スペイン語で「ビベサ」という言葉で表されるものだ。

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