LNG「鉄道輸送」は米エネルギー事情変えられるか
2020年1月14日

輸送手段がないためにこうして大気中に燃やしだされる(フレア)ことも大気汚染の大きな一因と言われる(写真はイメージです)
今から2年前の2018年1月末、大寒波に襲われていた米国北東部ボストン近郊に、1隻のLNG(液化天然ガス)船が到着して荷揚げを行った。極寒に震えあがっていた地域の多くの人々は、暖房用ガスの到着に安堵の胸をなでおろしたことだろう。
だが、その天然ガスが、英国で積み替えられたとはいえ経済制裁を課しているロシアの、北極海に面した「ヤマル・プロジェクト」からの生産ガス初荷だったという事実を知る人は、さほど多くはいないだろう。
同じころ、米国南部メキシコ湾に面したLNG製造基地からは、毎週のように欧州やアジアなどに向けてLNG輸出が行われていた。
北で輸入し、南から輸出する。
なぜ、同じ米国の南から北への供給が行われないのか。なぜ、このような経済合理性に反したことが起こるのか?
ネックは、輸送問題だ。
今やシェールオイル・ガスの大生産地となったパーミアンを抱えるテキサス、ニューメキシコ州などからはもとより、ボストンには至近の東部ペンシルベニア州に広がるマーセラスからの輸送パイプラインも、能力が不足しているからだ。マーセラスとは、最近「シェブロン」等の大手国際石油会社ですら巨額の評価損を計上せざるを得ないほど需要を上回る生産が続き、ガス価格が低迷しているところだ(『2020年原油価格:新しい秩序で「ニューノーマル」の時代に』2020年1月3日)。
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