フルシチョフソ連首相がキューバからのミサイル撤去を発表したのは、1962年10月28日のこと。朝、ケネディ米大統領が教会に行く(写真)という情報を知り、これが米ソ開戦を暗示するものだと考えたのだった。のちにこの日は「黄金の日曜日」と呼ばれるようになった (C)AFP=時事

 

 2020年早々、「第3次世界大戦」になるかもしれないとの危機だった。

 周知のとおり、1月3日にイラク国内でイランの革命防衛隊クッズ部隊(コドス部隊やコッズ部隊とも呼ばれる)の司令官ガセム・ソレイマニが、イラクの親イランシーア派民兵組織「カタイブ・ヒズボラ」の指導者であるアブ・マフディ・ムハンディスと共に殺害された。それをきっかけとして、軍事的緊張関係がコントロール出来ないほどエスカレートするのではないかと懸念された。

 現時点では、緊張関係が続いているが、当面の危機は過ぎ去ったと言えよう。

 本稿では、今回の危機を1962年のキューバ危機と類似する危機と見立てて分析してみたい。

計算違いの連鎖

 今回の危機は、イランとアメリカ互いの計算違いによってエスカレートしていったとみるのが適切であろう。2019年6月にイランがペルシャ湾上空を飛行するドローンを撃墜した際、ドナルド・トランプ米大統領は報復攻撃を命じたが、それが実行される10分前に攻撃中止させた。イランはこの経験から、トランプ大統領は「引き金を引けない大統領」と理解し、それに基づいて行動するようになった。

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