今回は物別れではなく歩み寄ってはいるが(昨年6月「大阪サミット」時の首脳会談)(C)AFP=時事
 

 2019年の原油価格動向に影響を与えた大きな要因の1つが、「米中貿易戦争」の行方だった。

 GDP(国内総生産)で世界1位と2位の両国がいがみあい、双方で相手国からの輸入品への関税を高くすることなどを通じて貿易総量が減少すると、世界全体の経済成長は減速し、石油消費の伸びが落ち込むと市場が判断しているからだ。「戦争」が激化しそうになると原油価格は下落し、一休止しそうだ、というニュースが流れると下支えされるという展開をみせていた。

 そして両国は2020年1月15日、「第一段階合意」に達した(たとえば『日本経済新聞電子版』『米中「第一段階合意」に署名 中国、米製品の輸入5割増』2020年1月16日05:13更新)。

 実態のある「合意」なのかどうか疑問が残るが、原油市場には「とりあえず最悪の事態は免れそうだ」との安堵感が流れた。

 だが筆者は、ことエネルギー分野に限って言えば、この「第一段階合意」で何が、どう変わるのか、腑に落ちなかった。なぜなら、中国が米国産品に課している原油5%、LNG(液化天然ガス)25%の追加関税が撤廃された、とのニュースがないからだ。

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