対テロ戦争最前線:「マリ」で見た惨状

執筆者:篠田英朗2020年1月27日
マリ・キダル近郊で、仕掛け爆弾で破壊された国連の車両=2016年7月 (C)AFP=時事

 

 1月の出張で、西アフリカの小国マリの首都バマコにある「MINUSMA」(国際連合マリ多元統合安定化ミッション)本部を訪問し、複数部署で聞き取り調査を行った。マリのMINUSMAは、殉職者数で世界一の国連PKO(平和維持活動)であり、つまり最も危険な国連ミッションである。1万5000人(軍事・警察要員で1万3000人)以上の要員を擁するMINUSMAは、バマコの郊外に宿営地のような巨大な本部施設を設置し、厳重警備体制を敷いている。

マリに展開する大規模国連PKO

 2013年に設立されたMINUSMAは、2014年に設立された中央アフリカ共和国の「MINUSCA」(国連中央アフリカ多元統合安定化ミッション)についで新しい国連PKOミッションである。国連PKOは近年になって、その数も予算も人員も減少し始めているので、MINUSMAとMINUSCAが設立された5年ほど前が、歴史的なピークであったと言える。

 MINUSMAが特に深刻視されているのは、敵性勢力による攻撃によって、殉職者が多数生まれてしまっていることである。MINUSMAは設立以来6年余りの間に206名の殉職者を出しているが、そのうち敵性勢力による攻撃による殉職者が128名とされており、群を抜いて数が多い。

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