ウイルスが見つかった武漢の市場(C)AFP=時事
 

 2020年の春節を前にして、中国湖北省の省都・武漢市で発生した新型コロナウイルスは、中国国内はもちろん、世界各地に拡散し猛威を振るっている。

 中国政府は武漢市の閉鎖からはじまり、ついには海外への団体旅行禁止措置を実施するに至りはしたが、初期対応の遅れが響いている。習近平政権が春節休暇を返上して本腰を入れ動き出したようだが、効果的な対応策は依然として見つかってはいないと見るべきだろう。

 全容が掴めないほどまでに被害が拡大した原因については、中国人のたくましすぎる食文化、衛生面の不整備、共産党政権の隠ぺい体質などが挙げられる。新型コロナウイルスが世界的な嫌中ムード拡大のキッカケとなり、このままでは「中華民族の偉大な復興」も頓挫しかねないだけに、習近平政権としては早急に抜本的な対策を講ずる必要があるはずだ。

「移動」があり得なかった毛沢東時代

 なぜ今回、ここまで被害が拡大したのか。

 ここで毛沢東の時代のことを考えてみる。

 当時でも、いわゆる「ゲテモノ」と分類されるようなものは食べられていた。大躍進時代の飢餓地獄や文化大革命の下放政策に従って農村生活を経験した世代の回想録を読むと、今以上にとにもかくにも口に入るものは何でも食べていた。ならば当時も、今回と同じような緊急事態がより高い頻度で発生していた、と考えても不思議ではないだろう。にもかかわらず、そういった事態は報告されていない。

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