サウジとイランのどちらが「普通の国」か

執筆者:池内恵2020年1月29日

サウジアラビアのアーディル・ジュベイル外交担当国務相(元外相)が、1月23日にダボス会議でイランに「普通の国」になれ、と告げたことが少々話題になっている。サウジ系のメディアでは、当然のことだが「言ってやった」と囃し立てる。

"Jubeir Says Restoring Ties with Iran Hinges on its Return to ‘Normal State’
Thursday," Asharq Al-Awsat, January 23, 2020.

しかしSNSなどを見ていると、「どの口が言うんだ」という揶揄の声が溢れる。

確かに、「サウド家のアラビア」と、国家を一部族の私有財産であるかのように定義し、建国以来100年近く、初代国王の無数の子供達が兄弟で王位を継承してきた部族国家のサウジが「普通の国」になれと他の国に指図するのは、どちらが「普通の国」か、と揶揄の対象になるのは致し方がないところだろう。

ただし、これは忘れられがちだが、イランもまた、40年前の革命で権力を奪取した革命勢力が、競合する諸勢力を粛清して権力を掌握し、イスラーム教シーア派の法を上位の規範とし、イスラーム法学者が司法・立法・行政を上から監督する独自の体制であり「普通の国」とは言い難い。

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