菅野義人さんが再開墾に挑み、土をよみがえらせた放牧地(2020年1月4日、福島県飯舘村比曽=筆者撮影)
 

 1月初め、常磐自動車道を南相馬インターで降り、阿武隈山地に分け入る峠道を越えて福島県飯舘村を訪ねた。

 2011年3月の東京電力福島第1原子力発電所事故での被災から、間もなく10年目を迎える山村は、人けのない冬枯れの風景に眠っていた。 

 原発事故まで約6200人が住んだ村は、拡散した放射性物質による汚染のため政府から全住民の計画的避難を指示され、環境省の大規模な除染作業を経て、2017年3月末に避難指示が解除された(帰還困難区域の長泥地区を除く)。

 現時点の登録人口は5467人。このうち帰還届を出した村内居住者は1392人と村のホームページにあるが、避難先だった福島市などにも家を持つなど二重居住の世帯も多く(固定資産税などは国が減免)、通年で暮らす帰還者はまだ少ない。村内で営業中の店は道の駅やガソリンスタンドなど一握りで、各集落には野積みされた黒い除染土袋の仮置き場がいまも居座る。

帰還した篤農家

 菅野義人さん(67)。原発事故の翌年から取材の縁を重ねてきた農家だ。

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