〈私は、楽をして金を儲ける医師に対して、あまり良い印象をもっていませんでした。ところが、最終的に、私は医学部を受験しました。そこには、自分の適性や将来への夢のような高尚な話は一切なく、「片親で私を育ててくれた母親の期待に反したくない」という個人的、情緒的な考えに基づいて判断しました。これが、私が進路を決めるに至った本音です。……ただ、医学部進学の動機がいかなるものであったにせよ、私は医師を職業に選んで良かったと思っています。医師はやりがいのある仕事だからです〉(上昌広『ヤバい医学部 なぜ最強学部であり続けるのか』「第1章:私の医師人生 医学部を受験した動機」より)
これを、灘高校(兵庫県)卒、現役で東京大学理科三類に合格し、医学部医学科卒業、若くして東大医科学研究所教授となり、40代のうちに独立して自らの研究所を立ち上げるという、傍から見れば「エリート」コースを歩んだ著者・上昌広氏が書いたものだと知ったら、医学部志望の受験生達はどう反応するだろうか。
今まで教えられてきたことが裏切られたような衝撃が半分、有名医学者の若かりし日の等身大の姿が自分とさして変わらぬものであることを知った安堵が半分、といったところであろうか。
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