灼熱――評伝「藤原あき」の生涯(87)
2020年2月9日

撮影年不詳ながら、義江との離婚、独り立ちを決意した頃のあき(自伝『ひとり生きる』(ダヴィッド社、1956年)より)
「奥様テレビ見まして? 昨日の『私の秘密』」
「ええ、見ましたわ奥様。また違うお着物をお召しになってたではありませんの」
「いったい、藤原あきさんて方はどのくらいの着物をお持ちなのかしら」
「藤原義江の奥さんですからすごいんじゃありませんこと」
「いやだ奥様、ご存じありませんの?」
「あのおふたりは別居中で、藤原義江には他に女性がいて、しかも借金で首が回らないようなのですのよ」
「まあ、そんな事になってますの? だからあきさんがテレビに出て稼いでいるのかしら」
また別の視聴者は、
「藤原あきって、あの藤原義江と結婚した、藤原あきだろ? 昭和のはじめは姦通罪に問われるとかでさ『妖婦』とか新聞に書かれて、悪い女の印象だったけど。あれがいまの藤原あきか! 俺の親の歳くらいだと思うけど若いな。上品で頭がキレて見ていて楽しいね、あの人」
また別の者たちは、
「えっ、あの方60歳なのですか。まーお若い。昔ロシアに亡命をやられて苦労されているというのに」
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