銃乱射事件が起きたショッピングモール (C) EPA=時事 

 

 2月8日、タイ東北部の地方都市ナコンラーチャシーマー(通称「コーラート」)において、タイ陸軍の下級兵士が上官とその母親を射殺した後、市内のショッピングモールに立て籠もるという銃乱射事件(死者29人、負傷者58人)が発生した。

「微笑みの国」のイメージをぶち壊すような無差別大量殺人であっただけではなく、容疑者がSNSで事件の予告めいた情報を発信していたこともあってか、事件発生直後は我が国のメディアでもセンセーショナルに報じられていた。

 だが、折からの新型コロナウイルス関連ニュースの洪水を前にしては、やはり忘れ去られてしまうものらしい。

 もっとも、事件発生から現在までの経過を振り返ってみるなら、現在のタイが抱えた問題が浮かび上がってくる。やはり事件が社会に広げる波紋は、一兵士が引き起こした一過性の衝撃的事件に留まるものではないように思える。

 一部のメディアでは、タイ国軍兵士は給料が低いゆえにサイドビジネスに励まざるを得ないという背景から、不動産取引に関する金銭上のトラブルが事件の引き金になったと報じる。容疑者が陸軍特殊部隊との銃撃戦の末に射殺されていることから、真相はヤブの中だ。

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