「感染爆発」韓国で見た「ウイルス対策」

執筆者:大野ゆり子2020年3月5日
コロナウイルスの感染予防のため、ソウル市内の市場で消毒薬を散布する人々。新興宗教のクラスターから始まった爆発的な感染は、未だ収束の見込みがない (C)EPA=時事

 

 韓国で新型コロナウイルス感染者が30倍以上と爆発的な増加を見せた1週間、ちょうど私は、ソウル市のオーケストラから招聘された夫の客演に同行してソウルに滞在していた。

 韓国に入国した2月16日の時点では、確認されていた感染症例数は30で安定。オーケストラ事務局からは、

 「新型ウイルスの感染者数は少なく、全員が隔離されているので心配しないように」

 と、メールをもらっていた。その数日後に歯止めなく感染者が増加したことが、韓国国民にとってもどれほど想定外だったか伺い知れる。

37度5分を超えた来場者は……

 2015年にMARS(中東呼吸器症候群)を経験した韓国での危機意識は、決して薄かったわけではない。2月中旬時点では、少なくともソウルのムードに比べると、日本がのんびりと感じられたほどだ。

 オーケストラ練習中には、楽団員が安心して練習できるよう、消毒液、マスクが配布されたし、コンサート当日も会場のエントランスには消毒液が設置され、希望する観客にはマスクが配られた。韓国では、マスクや消毒薬を買い占めたり、売り惜しんだりしたら、2年以下の懲役または5000万ウォン(約460万円)以下の罰金が科せられるという法律が、4月30 日までの期限付きで2月初めに施行されたという。それが功を奏したのか、私が滞在していたころは、マスクを宿泊先近くのコンビニで簡単に購入できた。オフィス街でも、ほとんどがマスク姿である。

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