元米国務長官ジョン・フォスター・ダレスで思い出すのは、1950年6月25日に始まった朝鮮戦争勃発当時のことである。

 当時、わが家は奈良に住んでいたが、父が大阪市住吉区帝塚山にももう1軒もっていたので、私は大阪府立住吉高校に通った。そのため、近鉄・奈良線を利用した。その沿線の若江岩田駅付近の町工場がにわかに活況を呈しだした。朝鮮戦争による「朝鮮特需」のためである。

 当時、ダレスは民主党のトルーマン政権のディーン・アチソン国務長官の下で国務長官顧問のポストについていた。『戦争か平和か』(藤崎万里訳)はその頃の著作である。

 本書の第1章「危険」は、こう書き出されている。

〈われわれが積極的に、まともに努力して戦争を回避しない限り、戦争になる可能性は多い〉

 そして戦争回避のために「打つべき手はある」として、そのための4条件を挙げている。第4の条件は、「われわれの精神的な力をのばすこと。この精神的な力なくしては、いかなる政策も1つのやりくり以上の意味を持たないのである」(下線引用者)というのであった。

 では、「精神的な力」とは何か。読み進むと、ダレスはこう書いている。

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