通行を制限する長泥入り口のバリケード=2020年2月18日、飯舘村長泥(筆者撮影、以下同じ)
 

 晴れた日には青く太平洋が見える、阿武隈山地の標高約550メートルの峠道(国道399号)。

 2月18日、車で向かった福島県飯舘村長泥への道は雪に覆われていた。

 東京電力福島第1原子力発電所(双葉町・大熊町)と地理的に近く、2011年3月の同原発事故によって村内で唯一、放射線量が年間20ミリシーベルトを超える、と指定された帰還困難区域。

 東日本大震災と原発事故から丸9年を迎えた現在も、地区への出入りを制限する緑色のバリケードが立つ。行政区長の鴫原良友さん(69)に同行させてもらい、その現状を取材した。

山里を埋める除染土袋

 鴫原さんとの長泥行は、2016年10月、2018年5月に続いて3度目だった。バリケードの内側にすぐあるのは、「あぶくまロマンチック街道」の標石が立つ展望台。2年前には同じ場所で、つづら折りの道に連なる満開の桜並木を鴫原さんと見た。

 64年前の2村合併で飯舘村が誕生した際、長泥出身の初代村長が記念にソメイヨシノの苗木を住民に配り、植えられた。時の皇太子、美智子妃のご成婚祝賀も重なったという。村の桜の名所になり、住民たちが毎春花見を楽しんだ。原発事故の後は誰にも愛でられることなく咲き続けたが、この日見たのは、枝々がばっさりと伐られた無残な姿だった。

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