感染急増の中南米で深まる「分断」「格差」

執筆者:遅野井茂雄2020年3月18日
ベネズエラの首都カラカスの商店にて(C)EPA=時事

 

 中南米は、握手はもとよりハグや頬キスなどで頻繁に友情や親愛の情を確認し合うことを日常とする文化圏である。親しい者同士が、「抱擁(abrazo)」という単語をメールの結びに使う文化だ。そうした地域で、感染を防ぐために社会的距離をとるのが最も効果的と言われるのは、辛いものがある。

 新型コロナウイルスの感染拡大は、彼らから日常を奪い、儀礼や社交のあり様にも影響を及ぼすことになる。

 各国はウイルスの侵入に身構えている。経済的な打撃も含め、中南米社会が被る影響は計り知れない。

急速に増えている感染者数

 当初は、感染源となった中国、アジアから遠く離れ、夏季であるという原因からか、しばらく中南米は感染の空白地域であった。だが、2月26日にブラジルで最初に確認され、メキシコがこれに続き、3月に入ると感染は地域全体に拡大。今月2週目にはほぼ全ての国で感染者が確認された。

 その多くが、イタリアやスペインなどヨーロッパ経由での感染だ。感染者数は急速に増え続けており、米州保健機構(PAHO)によれば、3月16日午前10時現在で、ブラジルの84人を最高に全体で722人となっている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。