不謹慎と言われるかもしれないが、イランでの新型コロナウイルスの爆発的な広がりは、イランのイスラーム革命体制の指導中枢の最も弱い部分、すなわちその「高齢化」を直撃しているのではないか、と推測せざるを得ない。

革命は往々にして「若者」によって主導される。イラン革命の場合、1979年に20歳前後だった世代が、多くは大学で革命に参加し、シャーの専制支配による王政を打倒、その後の左翼やリベラル派、イスラーム諸派の各種革命派との抗争に勝ち抜き、1980−88年のイラン・イラク戦争に従軍して指導し、そのまま現在まで権力を握ってきた。当時の若者は今、最若手でも60歳を超えている。60歳から70歳の、「かつての革命の若者」たちが、革命防衛隊をはじめとする、イスラーム革命体制の統治機構の頂点に君臨している。

革命と戦争を戦い抜いた「同志」たちが体制の中枢、各組織の頂点を押さえていることは、体制の結束の維持には好都合だろう。しかしこれは他の勢力を疎外させる要因にもなる。革命は1回きりの事象であり、革命の瞬間は大幅な刷新が起こるが、逆に、毎年革命を起こして新しい人材や考えを取り入れていくわけにはいかず、むしろ今年2月の選挙でも明らかなように、立候補審査の制度を用いて批判勢力を排除していけるため、硬直化し、時代遅れとなりかねない。

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