灼熱――評伝「藤原あき」の生涯(94)

執筆者:佐野美和2020年3月29日
撮影年不詳ながら、義江との離婚、独り立ちを決意した頃のあき(自伝『ひとり生きる』=ダヴィッド社、1956年=より)

「あきちゃん、選挙に出てくれるのだったら『私の秘密』は降りなければならないよ」

「相談にのってくれている高橋圭三さんに聞いたわ。公職選挙法とやらで出馬となったらもう出演はだめみたいね」

 いとこで経済企画庁長官の藤山愛一郎からの参議院選出馬に関して、あきがどうしても譲れなかったのが、NHKテレビにレギュラー出演している『私の秘密』の降板だった。

番組出演はもはやあきの人生となっているし、視聴者にとってもあきの出演は生活の一部になっている。

 最初の藤山からの出馬の打診に際しては軽く受け流していたものの、番組を降りなくてはならないとなると、もはや考える余地もない。

 あきはきちんと断った。

「『秘密』を降りるなんて考えられないし、第一「おしゃれ」を売っている私のようなものが国会議員なんて変だわ。女性議員は社会党の加藤シヅエさんみたいな人がいいのよ。彼女とは女学校で同級でしたけれど、優秀だったわ。自民党なんて男の集まりよ」

 かわすあきだったが、藤山も引かない。

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