その日最後に登壇したのは、南米ウルグアイのホセ・ムヒカ大統領(当時)だった。席もまばらな会議場で始まった、10分ほどのスピーチ。
だがその内容は、世界にはびこる行き過ぎた「消費至上主義」に対する批判、“発展イコール幸福”という「観念」の否定、今人類に突き付けられている環境や貧困などの問題は政治が解決するべきだ、といった刺激的な内容に満ち満ちていた。
かつて反政府運動の闘士として活動し、政治犯として13年にわたって全国の刑務所をたらい回しにされたムヒカ。解放後は国会議員や閣僚を経て2010年に大統領に就任したが、豪華な公邸に住むことをせず、暇を見つけては自らトラクターを運転して農作業に精を出し、大統領給与の90%を寄付するといった質素な生活をしていることから、就任当時から「世界でいちばん貧しい大統領」と呼ばれていたムヒカ。ところがこのスピーチが世界で報道されて以来、世界の彼を見る目は大きく変わった。
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