語り継がれるデクエヤル氏の功績(国連HPより)

 

 1982年から2期10年にわたって国連事務総長を務めたペレス・デクエヤル氏が、ペルーの自宅で3月4日に死去した。100歳の誕生日を迎えて間もなくしての訃報であった。

 同氏は、中南米でただ1人、国連事務総長を務めたという偉業はもとより、ペルー政治に大きく貢献した人物としても知られる。

 デクエヤル氏は、カリスマ性や雄弁さを備えたラテン世界によくあるタイプの指導者ではない。冷静沈着さをモットーに、地味で保守的だが内に強さを秘めた、「ノブリス・オブリージェ」(社会的地位を有する者はそれ相応の義務を負わねばならないという考え方)を彷彿とさせる人柄が印象的だ。民主制度に対する信念も強く、協調性を尊び、対立と分断を養分に増長するポピュリズム政治からも縁遠かった。

 氏の訃報は、政治危機に覆われ、対立が露わになった現代ペルーの民主政治や中南米の国際関係に、内省を迫るものとなっている。

 ここでは主にペルーと中南米との関わりで、氏の外交官、政治家としての足跡をたどることにしたい。

転がり込んできた事務総長ポスト

 デクエヤル氏は1940年にペルー外務省に入省し、1944年にパリの駐フランス大使館に書記官として赴任。1946年の国連初総会にも、連合国側で戦争に勝利したペルー代表団の一員として出席している。

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