「分断」の中南米に内省を迫る「故・デクエヤル元国連事務総長」の軌跡

執筆者:遅野井茂雄 2020年3月30日
カテゴリ: 政治
エリア: 中南米
語り継がれるデクエヤル氏の功績(国連HPより)

 

 1982年から2期10年にわたって国連事務総長を務めたペレス・デクエヤル氏が、ペルーの自宅で3月4日に死去した。100歳の誕生日を迎えて間もなくしての訃報であった。

 同氏は、中南米でただ1人、国連事務総長を務めたという偉業はもとより、ペルー政治に大きく貢献した人物としても知られる。

 デクエヤル氏は、カリスマ性や雄弁さを備えたラテン世界によくあるタイプの指導者ではない。冷静沈着さをモットーに、地味で保守的だが内に強さを秘めた、「ノブリス・オブリージェ」(社会的地位を有する者はそれ相応の義務を負わねばならないという考え方)を彷彿とさせる人柄が印象的だ。民主制度に対する信念も強く、協調性を尊び、対立と分断を養分に増長するポピュリズム政治からも縁遠かった。

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執筆者プロフィール
遅野井茂雄(おそのいしげお) 筑波大学名誉教授。1952年松本市生れ。東京外国語大学卒。筑波大学大学院修士課程修了後、アジア経済研究所入所。ペルー問題研究所客員研究員、在ペルー日本国大使館1等書記官、アジア経済研究所主任調査研究員、南山大学教授を経て、2003年より筑波大学大学院教授、人文社会系長、2018年4月より現職。専門はラテンアメリカ政治・国際関係。主著に『試練のフジモリ大統領―現代ペルー危機をどう捉えるか』(日本放送出版協会、共著)、『現代ペルーとフジモリ政権 (アジアを見る眼)』(アジア経済研究所)、『ラテンアメリカ世界を生きる』(新評論、共著)、『21世紀ラテンアメリカの左派政権:虚像と実像』(アジア経済研究所、編著)、『現代アンデス諸国の政治変動』(明石書店、共著)など。
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