ジョンソン英首相=3日に首相官邸提供 (C)AFP=時事

 

 気温が20度を超え、穏やかに晴れた4月12日日曜日の昼過ぎ、英政府の一斉メールが関係先に流れた。

 〈首相は病院を退出し、チェッカーズ(首相別荘)で回復を期す。医療チームの助言に基づき、すぐには公務には復帰しない。自らが受けた素晴らしい治療に対し、首相はセントトーマス病院のみんなに感謝の意を表している〉

 英首相ボリス・ジョンソンの退院を告げる声明だった。新型コロナウイルスに感染した首相は、1週間にわたって入院生活を強いられ、そのうちの3晩を集中治療室(ICU)で過ごしていた。

 声明から間もなく、ジョンソン自身がビデオメッセージで国民に語りかけた。病院で治療にあたった1人ひとりの名前を挙げて謝意を述べるとともに、感染症との戦いに打ち勝つ意欲を示した。顔がやや細り、本格的な回復には至らない様子だが、明確で力のこもった語りぶりは普段通りである。

 それまで、ジョンソンの言葉や行動は断片的にしか公表されず、入院の長期化もささやかれていただけに、その復活ぶりは国民に大きな希望と安堵感を与えた。この日は折しも復活祭の当日、4連休の真ん中に当たっていた。あまりにタイミングがいい。よみがえる姿を印象づけようと、この日の退院を演出したのかもしれない。

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