欧州で急成長「ポピュリズム」の本質を知る

熊谷徹『欧州分裂クライシス ポピュリズム革命はどこへ向かうか』(NHK出版新書)

執筆者:磯山友幸2020年4月18日

 どう考えても、経済的に大損失になる欧州連合(EU)からの離脱に踏み切る国はない、というのが長年の私の考えだった。

 私が欧州に新聞社の特派員として駐在したのは2002年春から2006年の秋まで。ユーロの紙幣と貨幣が導入された直後で、EUが東欧へと広がっていく熱狂の真っ只中にいた。国境は日本の県境のように、物理的には姿を消し、巨大統一市場の誕生に沸いた。それから15年、まさか本当にEUから離脱する国が出てくるとは思わなかった。

「ブレグジット」こそ象徴

ドイツに30年暮らし、欧州を見続けてきた筆者が指摘する「分断の危機」とは……

 本書『欧州分裂クライシス ポピュリズム革命はどこへ向かうか』(NHK出版新書)の著者である熊谷徹さんは、NHKの記者を経て、1990年に早々とフリージャーナリストに転じた人だ。以来30年にわたってドイツ・ミュンヘンに住み、取材・執筆活動を続けている。

 ドイツ国民のムードの変化を敏感に感じ記事や本を書く、日本語での発信者としては極めて貴重な存在である。その熊谷さんが、欧州に「分裂の危機」が迫っているというのだから、読まないわけにはいかない。

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