『フィガロ』紙のインタビューに答えるユベール・ヴェドリーヌ氏。彼はシラク大統領時代、与党が総選挙で負けた際の社会党所属の外相だった

 

 EU(欧州連合)基本条約は、

 〈連合は市民に、その内部で人々の自由な移動が確保された国境のない自由、安全、正義の空間を提供する〉(第3条第2項)

 とうたっている。

 だが、いまやEUのいたるところで国境が復活している。

「シェンゲン協定」が根拠

 新型コロナウイルスの感染爆発があったフランスの地方と国境を接するドイツの州では、越境労働者に罵声を浴びせたり卵をぶつけたりする差別事件も起きた。

 新型コロナはEUをズタズタに引き裂いてしまった。

 これはEU崩壊の始まりなのだろうか。

 「『シェンゲン』の中で、国境開放されたヨーロッパというドグマは、シリア内戦による移民の波を前にして、すでにここ数年来厳しく疑問を呈されていました。しかし、新型コロナのショックは、多くの反射的思考、思想、信仰を霧散させています」

 ユベール・ヴェドリーヌ氏は、3月23日の仏日刊紙『フィガロ』のインタビューに答えてこう指摘する。なお、氏は20年ほど前、ジャック・シラク大統領の時代に与党が総選挙で負け、ねじれ政権になったときの社会党所属の外相である。

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