新型コロナの犠牲者たちを特集した英高級紙『ガーディアン』。記事では1人1人の「横顔」を実名、写真付きで紹介している

 

 新型コロナウイルスは、21世紀前半の人類を襲った苦難として世界史に刻まれるはずだ。

 そんな重大事を伝え記録するメディア報道に、日本と英米とで重要な違いがある。英語圏の報道では、ウイルスの犠牲になった普通の市民たちが名前や写真とともに多数紹介され、友人や家族の言葉が伝えられる。かたや日本で報じられる犠牲者は、セレブとエリートにほぼ限られる。一般の人々は「70代の男性」のように表現され、名も顔もない。なぜこんな落差が生まれているのか。 

ともに生きてきた市民を悼む

 〈ロンドン交通局元エンジニアのアール・ドルフィさん71歳は、末娘の結婚式に出た2~3カ月後にウイルスのため死亡した〉

 〈元清掃員ステファニー・インスさん57歳と、その母親シャーリーさん78歳は相次いで同じ病院で亡くなった〉

 〈ケニス・イェボアさん55歳はバス運転手で、誰とでも気さくに会話するおじさん〉

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