灼熱――評伝「藤原あき」の生涯(104)

執筆者:佐野美和2020年6月7日
撮影年不詳ながら、義江との離婚、独り立ちを決意した頃のあき(自伝『ひとり生きる』=ダヴィッド社、1956年=より)

「国会の赤絨毯って、結構汚れているのね。がっかりしたわ。でもあれを取りかえるのは大変なことでしょうし、それも税金ですからね」

 あきは初登院の感想をこう話す。

 当選早々から、様々な集まりに引っ張りだこの毎日で息つく暇もない。

「私は女の幸福のために選挙に出たんです。ってなことを言いますと、ある外国人記者は『憲法が変わってから日本の女は十分幸福じゃないか』と言うんです。憲法は変わっても男の頭はちっとも変わっていない。法律には女をおとし入れる穴がいっぱいある。私はその穴をナラしてローラーをかけるために政治家になったのです」

 会場を埋めつくす300人の婦人たちが笑顔であきに力強い拍手を送る。

 横浜・磯子のプリンスホテルで、来年の神奈川県議選に出馬する婦人候補者の発会式にての来賓挨拶だ。

 集まった婦人たちは、政治に関心があるというより実物の「藤原あき」を一目見たかった。どんな着物とどんな髪型でやって来るのか、テレビで見た時と同じ喋り方をするのか。

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