「ポスト・コロナ」時代にどうなる「米中関係」「中東・ロシア」(下)

【特別採録】東大先端研「白熱オンライン会議」

執筆者:池内恵2020年6月23日
「Zoomウェビナー」を使ったオンラインでの議論はまさに白熱した(上段左から=池内氏、坂元氏、川島氏、下段左から杉田氏、小泉氏、「バーチャル東大先端研」)。現在「YouTube」でも公開中
 

小泉悠 今回の新型コロナウイルスの問題は、コロナ前から生じていた現象を加速させる動きと、大きく変質させる動きの両方をもたらしている。1つは、パワー、経済力、テクノロジーといった物理的パワーが関わる大国間競争にコロナ問題が影響を及ぼしている。もう1つは、国家はどうあるべきか、国家と社会の関係はどうあるべきかという統治理念をめぐる、米ロ間、米中間の体制間競争にも影響を及ぼしている。

 今後、おそらく体制間競争は加速していくであろうが、それは従来の予想とは異なる形になりつつあるように感じる。

 たとえばロシアは、アメリカと中国と比べると突出して国力が弱く、人口も少なく、科学技術力も最先端ではない。そのロシアがアメリカや中国と対抗してこられたのは、エネルギーが存在するからである。しかし、今回のコロナ騒動はさまざまな経済活動のためのエネルギー資源の需要を減退させた。この状況が長期化すると、今後ロシアは10年間実施してきた軍事力を背景とした対外積極外交の維持が困難になる。現在のコロナによる移動制限が一過性で終わるのか、長期的に続くのかという問題は、ロシアをめぐるユーラシア国際政治の今後をうらなう上で大きな焦点になる。

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