コロナより恐ろしい米露中朝「核のリスク」

執筆者:名越健郎2020年6月24日
2011年2月、ラブロフ露外相(左)とクリントン米国務長官(当時、右)が批准書を交換して新STARTが発効。「核なき世界」へ向けて一歩踏み出したように見えたのだが……(C)AFP=時事

 

 国連軍縮部門トップの中満泉国連事務次長が英誌『エコノミスト』(6月20日付)で、

「核の恐怖が高まっている。偶発かどうかはともかく、核爆発が起きるリスクは冷戦がピークだった時以来、最も高い」

 と警告した。中満次長は、冷戦期や冷戦後に見られた軍縮や軍備管理の枠組みが損なわれていることに危機感を強めている。

 スウェーデンの「ストックホルム国際平和研究所」(SIPRI)も6月15日に公表した年次報告書で、核兵器を保有する米露中英仏、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮の9カ国が核兵器近代化を進める一方、軍備管理交渉の見通しは暗いとし、国際戦略環境が一段と悪化していると警告した。

 戦略環境悪化の背景には、新型コロナ禍に伴う自国優先主義やグローバル化の後退、米中対立の激化もありそうだ。

 こうした中で、米中露3国は核戦力近代化を進め、核兵器使用のハードルを徐々に引き下げており、「核のリスク」が高まりつつある。

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