「金融制裁」でシリア「アサド政権」転覆狙う米「地経学パワー」の陥穽
2020年7月2日
戦闘では勝利したものの、戦後で敗北か――。
シリアのバッシャール・アサド大統領はそんな苦々しい思いを抱いているだろう。
米国は6月17日、「シーザー・シリア市民保護法」(シーザー法)に基づき、アサド大統領夫妻ら39の個人・組織を金融制裁などの対象に指定した。米国はシリアからの撤収でロシアやイランに影響力を奪われた形となったが、伝家の宝刀である金融制裁を使い、内戦後のシリアの戦後復興に「待った」をかけている。
アサド政権の倒壊を目指す金融制裁という米国の「地経学」戦略。それは目的を遂げるのだろうか。
シリアでビジネスすれば制裁対象に
シリアは1979年に米国務省にテロ支援国家として指定され、さらに2011年にシリアで「アラブの春」の一環として起きた民主化運動の弾圧もあり、アサド大統領らが米国のさまざまな制裁対象となっていた。だが、今回の制裁の根拠となった2019年12月成立のシーザー法は、3つの意味で強力だ。
1つは、原油、天然ガス、インフラ建設、シリア軍再建など、内戦後のシリア復興の要となる事業を狙い打ちする点。経済制裁とはある国の経済全体に深刻なダメージを与えるイメージがあるが、今回はシリアが戦後復興の主軸に据える特定のセクターに的を絞っている。
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