図書館内の中央ドーム(国境なき記者団提供)

 

 本連載の前稿『上』(2020年3月25日)では、国際NGO「国境なき記者団」がMinecraft(マインクラフト)というオンラインゲーム内に作った「検閲を受けない図書館」について紹介した。検閲の厳しい国で公開できなくなったコンテンツを仮想世界で公開しようという試みである。

 そこで今回はその「蔵書」を覗いてみようというわけだが、本論に入る前に、若干の背景情報を整理しておきたい。

ロシア初の規制対象となった『Grani.ru』

「図書館」のロシアホールに収蔵されている2つの記事は、どちらも、2000年に創立されたインターネットメディア『Grani.ru』に掲載されたものである。

 その創立者であるボリス・ベレゾフスキーは、ボリス・エリツィン政権下で多くのメディアを手中に収め、露骨な親エリツィン・キャンペーンを展開して政権を支えた「メディア王」として知られる。

 この意味では、エリツィン政権下で台頭してきたウラジーミル・プーチン氏とは「同じ釜の飯を食った仲」だが、2000年にプーチン政権が台頭すると潮目が変わった。

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