英女王が訪問できない3つの国とその理由

執筆者:西川恵2009年2月号

 天皇、皇后両陛下は今夏、カナダを国賓として初訪問される。皇太子時代の一九五三年、英女王の戴冠式に列席される機会に立ち寄られたことはあるが、国賓訪問は初めてだ。 親日的なカナダのような大国になぜ天皇、皇后両陛下がこれまで訪れなかったかというと、英連邦のうちカナダ、豪州など十六カ国はエリザベス英女王を国家元首としている。英国を国賓訪問することは、すなわちこれら十六カ国を訪れることになるとの理屈だった。その意味ではカナダ訪問はこれまでの慣例を破る新しい一歩である。 知り合いの外交官が「豪州はこの訪問をどう見ているでしょうね」と語ったように、豪州ではなくカナダが先になったのは興味深い。カナダと豪州は似たような国柄で、競争心も強い。日本に深い意図はなかったかも知れないが、穿った見方をすれば、豪州とは大戦中の戦争捕虜問題や捕鯨問題を抱え、いまは時期ではないとの判断があったとも考えられる。 英連邦に風穴が開き、天皇、皇后両陛下がまだ訪れていない主要国として韓国が残る。昨年四月来日した韓国の李明博大統領は、天皇陛下との会見で訪韓を招請した。しかし依然として難しい問題が残っている。 実は英国も、エリザベス女王が訪問できない主要な国がある。ギリシア、アイルランド、イスラエルの三カ国だ。

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